企業型確定拠出年金(企業型DC)の死亡一時金について詳しく解説します。
企業型DCは老後資金を形成するための制度ですが、加入者が死亡した場合、遺族へ資産が「死亡一時金」として支給されます。その仕組みや手続き、注意点についてわかりやすくお伝えします。
死亡一時金の概要
企業型DCでは、加入者が資産運用を行いながら老後資金を積み立てますが、以下のような場合に死亡一時金が支給されます。
- 加入期間中に死亡した場合
まだ老齢給付金を受け取る前に亡くなった場合、運用資産が死亡一時金として支給されます。 - 受給中に資産が残っている状態で死亡した場合
老齢給付金を受け取り始めていても、口座残高がある場合、その残高が死亡一時金として支給されます。
死亡一時金は、運用していた投資信託などの金融商品を現金化し、遺族に一括で支給されます。年金として分割受給はできない点に注意が必要です。
死亡一時金の受給権者とは?
受給権者の指定
企業型DCでは、加入者が生前に受取人を指定している場合、その指定された受取人が優先的に受給権者となります。たとえば、特定の家族に資産を渡したい場合、あらかじめ受取人を登録しておくことでスムーズに支給されます。
受取人を指定していない場合の受給順位
受取人を指定していなかった場合、次の順位で受取人が決定されます。
- 配偶者(事実婚も含む)
- 子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(主に生計を維持していた場合)
- 生計を維持していたその他の親族
- 上記以外の子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
※同順位者が複数いる場合、資産は等分されます。
死亡一時金にかかる税金
課税方法
企業型DCの死亡一時金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし、以下の控除や非課税枠が適用されます。
- 相続税の基礎控除
「3,000万円 +(法定相続人の数 × 600万円)」が控除されます。 - 死亡一時金の「退職手当金等」の扱い
法定相続人1人あたり500万円の非課税枠が追加されます。
例:法定相続人が3人の場合、500万円 × 3人分=1,500万円が非課税。
企業DCの死亡一時金は、「退職手当金等」の扱いとなり、退職手当金等の非課税(500万円×法定相続人の数)の適用があります。
「退職手当金等」には、勤務先から支払われる死亡退職金、小規模企業共済の死亡共済金も含まれます。
相続の手続きに不安がある場合は、税理士にご相談ください。
注意点
死亡から3年以上経過して受け取る場合、一時所得として所得税の課税対象になります。遅れた受給は税負担が大きくなる可能性があるため、迅速な手続きが重要です。
生前に受取人を指定するメリット
生前に受取人を指定しておくことで、以下のメリットがあります。
-
- スムーズな資産受け渡し
指定された受取人がいれば、手続きが簡略化されます。 - 遺族の事務負担を軽減
亡くなった後に家族が混乱しないよう、企業型DCの存在や受取人を伝えておくことが重要です。
- スムーズな資産受け渡し
専門家のアドバイス
企業型DCに関する手続きや運営管理機関の特定は、遺族にとって大きな負担になることがあります。生前に「どこの運営管理機関に、企業型DCの資産があるのか?」を伝えておきましょう。」
そうすることで、遺族の負担を軽減できます。
まとめ:早めの準備が大切
企業型DCの死亡一時金は、遺族の生活を支える大切なお金です。
以下のポイントを押さえておきましょう:
- 受取人を生前に指定する
- 運営管理機関を家族に知ってもらう
- 速やかに申請手続きを行う
相続に関するトラブルは、家族間で頻繁に起こる問題です。企業型DCの受け取りについても、事前に受取人を指定しておくことが重要です。
誰が受け取るのかを明確にすることで、遺族間の不和を防ぎ、手続きもスムーズに進みます。また、運営管理機関や資産状況を家族に伝えておくことで、万が一の際に遺族の負担を軽減できます。大切な家族を守るためにも、計画的な準備を進めておきましょう。
これから企業型DCの導入を検討されている企業や、手続きでお困りの方は、ぜひご相談ください。
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