「前職で企業型DCに加入していたので、今の会社でも導入してほしい!」という声にどう応えるべきか?

社長向け

社長さん、こんな声を耳にすることはありませんか?

「前職で企業型DC(確定拠出年金)に加入していました。今の会社でも導入してほしいです!」

なぜ、そのような要望が届くのでしょうか?

企業型DCは、多くの従業員にとって「退職金」や「老後資金という意識がある重要な制度です。
そのため、転職先にこの制度がない場合、老後資金形成への不安を感じる人も少なくありません。


特に、転職先で企業型DCがない場合、前職で積み立てた資産を
いったん解約して個人型DC(iDeCo)に移さなければならないという手続きが発生し、その過程でデメリットも生じます。

この記事では、なぜ転職者が企業型DCを求めるのか?その理由について詳しく解説します。

転職後、企業型DCがない場合の手続きとデメリット

企業型DCは、転職や退職時に必ず「資産移換」の手続きを行う必要があります。転職先に企業型DCの制度がない場合、資産を個人型DC(iDeCo)へ移換することになりますが、この手続きには以下のようなデメリットが伴います。

1. 一時的に「解約」されることで運用が中断

前職で加入していた企業型確定拠出年金(DC)の資金を移換する手続きが必要になります。しかし、転職先に企業型DCがない場合は、従業員本人が個人型確定拠出年金(iDeCo)の口座を開設し、資金を移す必要があります。企業型DCからiDeCoへ資産を移す際には、一度すべての資産が現金化(解約)されます。この過程で、手続きが完了するまでの1~2ヶ月間、資産は運用されない状態になります。

一方、転職先に企業型DCがある場合は、入社者が1枚の書類を追加提出するだけで、前職のDC資金を転職先のDCへ簡単に移し替えることができます。この手続きにより、その後の資金運用もスムーズに進められます。

2. 管理手数料の負担増

企業型DCでは手数料を会社が負担となりますが、iDeCoでは金融機関によって月々の口座管理手数料が発生します。従業員にとっては、この手数料が負担に感じられる場合があります。

3. 移換が遅れると「強制移換」のリスク

資産移換を6ヶ月以内に行わない場合、資産が国民年金基金連合会に強制移換されます。そのことも知らず、その結果、法定の6カ月間の期限を過ぎてしまい、資金はいったん全額解約となり、国の機関に「自動移換」されてしまうケースが少なくないのです。

強制移換されると以下のデメリットが生じます:

  • 運用が停止され、資産が増えない。
  • 手数料が発生。
  • 強制移換されている間は加入者等期間とみなされない。

なぜ従業員は企業型DCを求めるのか?

もしも、転職先に企業型DCがあった場合、加入者自身が資産を売却する必要はありません。移換時に資産は自動的に現金化され、資金運用もスムーズに進められます。

(転職先に企業型DCがある場合の手続き方法については別の記事でご紹介します。)

さらに、企業型DCは、従業員にとって以下のような安心感を提供します。

  1. 会社からの掛金拠出
    企業型DCでは掛金(拠出金)が会社から支給されるため、従業員の負担なく老後資金を積み立てることができます。
  2. 老後資金形成をサポート
    長期的な資産形成の手段として活用し、多くの従業員がこれを「退職金や老後資金の一部」として認識しています。
  3. 運用が非課税
    運用益が非課税であり、税制優遇が受けられるため、節税効果があります。

こうした理由から、前職で企業型DCを経験している従業員にとって、転職先に制度がないことは「福利厚生が後退した」と感じるかもしれません。もし企業型DCの導入が難しい場合もありますよね。その場合は、iDeCoへの案内を説明し、スムーズな移換を促すことで、従業員の不安を軽減することが可能です。

ですが、会社として企業型DCを導入する会社が年々増加しており、「前職で企業型DC(確定拠出年金)に加入していました。今の会社でも導入してほしいです!」という声は今後ますます増えてくると思います。

社労士みなみ
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