【徹底比較】中小企業の退職金制度「中退共」と「企業型DC」の違いとは?

退職金制度

中小企業が従業員の退職金制度を導入する際、代表的な選択肢となるのが「中小企業退職金共済制度(中退共)」と「企業型確定拠出年金(企業型DC)」です。

どちらも税制優遇を受けながら退職金(老後資金)を準備できる優れた制度ですが、その仕組みや目的には大きな違いがあります。

今回は、制度選びに迷っている経営者や人事担当者に向けて、中退共と企業型DCの決定的な違いを5つのポイントで詳しく解説します。

1. 運用主体と受け取り金額の決まり方

【中退共の場合】
国(勤労者退職金共済機構)が掛金を運用する安全・確実な制度です。退職金額はあらかじめ定められており(予定運用利回りを1%として設定等)、長く加入するほど手厚くなる設計になっています。

【企業型DCの場合】
事業主が拠出した掛金を加入者(従業員)自身が運用商品(投資信託や定期預金など)を選んで運用します。そのため、運用成績によって将来受け取る金額が増減する自己責任型の制度です。従業員に運用の裁量がある分、実施企業には従業員への投資教育(継続教育)を行う努力義務が法令で課せられます。

2. 加入対象者と役員の取り扱い

【中退共の場合】
従業員の福祉増進を目的としているため、原則として従業員全員を加入させる必要があります。また、法人企業の役員は加入できません(使用人兼務役員を除く)。

【企業型DCの場合】
原則70歳未満の厚生年金被保険者であれば、役職に関係なく社長や役員でも加入できる大きなメリットがあります。役員の掛金(月額最大55,000円まで)も全額損金として計上できます。また、給与の一部を減額して掛金に回す「選択制」を導入すれば、希望する従業員のみを加入させることも可能です。

3. 掛金の負担と柔軟性

【中退共の場合】
掛金は全額事業主負担であり、従業員に一部を負担させることや給与から天引きすることはできません。

【企業型DCの場合】
事業主掛金に加えて、従業員が自身の給与から任意で掛金を上乗せする「マッチング拠出」や、前述の「選択制」を組み合わせるなど、会社の予算や個人のライフプランに合わせた柔軟な制度設計が可能です。また、掛金として拠出された金額は社会保険料の算定基礎に含まれない点や、掛け金は経費にできる点も特徴です。

4. 退職金の「受け取り時期」

従業員にとって非常に重要な違いが、お金を受け取れるタイミングです。

【中退共の場合】
自己都合・会社都合を問わず、会社を退職した際に、中退共本部から直接従業員の口座へ退職金が支払われます。

【企業型DCの場合】
老後の生活資金形成を強く意識した年金制度であるため、若手社員が転職や退職をしても、原則60歳になるまで年金資産を引き出すことができません(所定の条件を満たした場合の脱退一時金などを除く)。途中で引き出せない分、転職先へ資産を持ち運ぶ(ポータビリティ)仕組みが整っています。

5. 導入コストと国の助成

【中退共の場合】
国が運営の大部分を担っているため、事業主側のシステム利用料などの手数料はかかりません。さらに、新規加入時や掛金月額を増額した際には、国から掛金の一部が助成される手厚いサポートがあります。

【企業型DCの場合】
導入・運営にはコストがかかります。例えばあるプランでは、導入費用(約11万円程度)や、毎月の事業主に対する運営管理手数料(16,500円など)、加入者1名あたりの資産管理手数料などが、全額会社負担として発生します。

まとめ:両制度は「併用(同時加入)」も可能!

中退共は「手軽で確実な退職金準備」、企業型DCは「柔軟な設計と税・社会保険料メリットを活かした老後資産形成」に向いています。

どちらか一つを選ぶだけでなく、中退共と企業型DCは、同一の事業所で同一の従業員が同時に加入(併用)することが法令上認められています。既存の中退共を継続しつつ、役員加入や社員の自助努力を促すために企業型DCを上乗せで導入するケースも考えられます。

自社の予算や従業員の年齢構成、解決したい課題を明確にし、最適な退職金制度をデザインしてみてはいかがでしょうか。