私たちが将来受け取る「企業年金」や「退職金」の制度には、大きく分けて2つのタイプがあるのをご存知でしょうか。
それが「確定給付型(DB)」と「確定拠出型(DC)」という制度です。
実はこの2つ、名前は似ていますが、その仕組みや「誰がリスクを負うのか」が全く異なります。
今回は、この2つの制度がどう違うのか、そしてそれぞれのメリットやどこにリスクが潜んでいるのかを、比較・解説していきます!
そもそも「企業年金」ってなに?
私たちが将来もらう年金といえば、まずは国民年金や厚生年金といった「公的年金」を思い浮かべますよね。
しかし、ご存知の通り、公的年金だけでは老後のゆとりある生活費としては十分ではないと言われています。
そこで、公的年金に「上乗せ」をして給付を行うことで、国民の多様な老後のニーズに対応し、より豊かな老後生活を送るための制度として用意されているのが「企業年金」です。
会社が従業員のために用意してくれるありがたい制度ですが、現在では多様な制度が設けられており、企業や個人は自らの希望に合った制度を実施することができる体制になっています。
その代表的なものが、先ほど挙げた確定給付型(DB)と確定拠出型(DC)なのです。
この2つは、もらえる金額の決まり方や、運用責任の所在が対照的な制度となっています。
約束された安心感!「確定給付型(DB)」の特徴
まずは「確定給付型」について見ていきましょう。
英語の「Defined Benefit」の頭文字をとって、一般的に「DB」とも呼ばれています。
主な特徴
- 将来もらえる金額が確定している
例:「定年時に1,000万円」「老後に毎月〇〇円」など、あらかじめ給付額が約束されています。 - 掛金は原則、会社が全額負担
※規約で定めて本人が同意すれば、従業員が一部負担することも可能です。 - 運用はプロにお任せ
従業員に代わって、会社が信託銀行や生命保険会社などの外部機関にお金を預け、管理・運用を行います。
確定給付型(DB)に潜む「リスク」とは?
従業員からすれば、老後の生活設計が立てやすく、投資知識がなくても専門家が運用してくれる「最高に安心な制度」に見えます。
しかし、この制度には大きなリスクが潜んでいます。
企業と従業員にとってのリスク
- 運用リスクは「会社」が負う
経済状況が悪化して運用が低迷し、積立金が不足した場合、なんと企業側が自腹を切って(追加拠出をして)穴埋めをしなければなりません。 - 安全第一で「増えにくい」
会社側は「絶対に損をしたくない」と考えるため、リスクをとらない「元本確保型」の消極的な運用になりがちです。結果的に、最終的な受取額が低く見積もられる可能性があります。 - 運用コストが高い
外部の金融機関に任せるため高い手数料がかかり、主に資金力のある大企業向けの制度となっています。
自分の未来は自分でつくる!「確定拠出型(DC)」の特徴
次に「確定拠出型」について解説します。
こちらは英語の「Defined Contribution」の頭文字をとって「DC」と呼ばれます。企業が導入するものを「企業型確定拠出年金(企業型DC)」と呼びます。
主な特徴
- 毎月積み立てる額(拠出額)が確定している
将来もらえる額ではなく、毎月いくら積み立てるかが決まっています。(※従業員自ら掛金を上乗せする「マッチング拠出」も利用可能な場合があります) - 積み立てたお金は「従業員自身」で運用する
定期預金のような安全資産か、投資信託のようなリスク・リターンがある商品か、自分で選びます。 - 将来もらえる額は「運用次第」
運用がうまくいけば大きく増えますが、失敗すれば元本割れして減ってしまうこともあります。
確定拠出型(DC)に潜む「リスク」と「メリット」
この制度の最大の特徴は、「運用リスクを従業員自身が負う」という点にあります。
DCのデメリット(リスク)
- 老後の生活設計が立てにくい:退職時にならないと、いくらもらえるか分かりません。
DCのメリット(強み)
- 運用で得た利益が【非課税】になる:通常約20%かかる税金がゼロになり、効率よく資産を増やせます。
- 持ち運びが可能:転職などで資格を喪失しても、条件を満たせば「iDeCo(個人型確定拠出年金)」などに移して運用を続けられます。
※企業側にとっては、追加の穴埋め負担がなく将来のコスト予測が容易なため、導入しやすいというメリットがあります。
結局どっちがいいの?時代の変化と私たちの対策
ここまで、2つの制度を比較してきました。分かりやすく表で振り返ってみましょう。
| 比較項目 | 確定給付型(DB) | 確定拠出型(DC) |
|---|---|---|
| 将来もらえる額 | あらかじめ確定している | 自分の運用成績次第で変動する |
| 運用する人 | 会社(外部の専門機関に委託) | 従業員自身(自分で商品を選ぶ) |
| 運用リスク | 会社が負う | 従業員が負う |
| 主なメリット | 確実にもらえる安心感 | 運用益が非課税、自分で増やせる |
昔の日本の会社では「DB」が主流でしたが、長引く低金利などの影響で企業が運用リスクを負い続けることが難しくなり、近年では「DC」へと制度を乗り換える企業が急増しています。
これからの時代はインフレ(物価上昇)が進んでいくとも言われています。物価が上がれば、現金の価値は相対的に下がってしまいます。そのような環境下では、運用益が非課税になり、自分自身でインフレに負けないようにお金を増やすことができる確定拠出型(DC)の方が、時代に合っているという見方もできます。


