企業型DC・iDeCoで放置はNG!運用指図者になる4つのパターンと対策

iDeCo(個人型確定拠出年金)

確定拠出年金(企業型DCやiDeCo)の制度について調べていると、「運用指図者(うんようさしずしゃ)」という言葉をよく目にしませんか?

「加入者とは何が違うの?」「自分が運用指図者になることなんてあるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。

結論から言うと、確定拠出年金を利用していく中で、転職や退職、あるいは会社の制度導入など、ライフスタイルの変化によって誰もが「運用指図者」になる可能性があります。しかし、「とりあえず今は掛金を払わなければいいんでしょ」と安易に放置してしまうと、毎月の手数料で大切な資産が目減りしてしまう「手数料負け」のリスクが潜んでいます。

この記事では、運用指図者とは一体何なのかという基本から、具体的に運用指図者になる4つのパターン、そして手数料で損をしないための具体的な解決策まで、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します!

社労士みなみ
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今回は、SBIベネフィット・システムズの企業型DC「SBIいろどりプラン」を例に解説します。

「運用指図者」とは?「加入者」との決定的な違い

確定拠出年金に関わる人には、大きく分けて「加入者」と「運用指図者」の2つの立場があります。その違いはズバリ「掛金を拠出(積み立て)しているかどうか」です。

加入者 毎月新しく掛金を積み立てながら、その資産を運用している人のこと。
運用指図者 何らかの理由で新しい掛金を出すのをやめ、これまで積み立ててきた年金資産の運用(商品の変更や配分の指定など)のみを行っている人のこと。

つまり、確定拠出年金の口座に新しいお金を入れるのはお休みして、今あるお金だけで投資信託などの運用を続けている状態の人のことを「運用指図者」と呼びます。

運用指図者になるメリットと注意点

新たな掛金を出さないため、掛金が全額非課税(損金または所得控除)になるという税制優遇は受けられなくなります。しかし、これまで積み立てた年金資産の投資信託の売却益・配当益、銀行の定期預金の利息などの運用益が非課税になるという強力なメリットはそのまま継続します。

また、確定拠出年金は原則60歳になるまで資産を引き出すことができませんが、いつから受け取れるかは企業型と個人型それぞれの加入者期間と運用指図者期間を通算した「通算加入者等期間」の長さによって決まります。

掛金を出していない「運用指図者期間」であっても、この期間にはしっかりとカウントされるため、これまで制度に関わってきた期間が無駄になることはありません。

企業型DC・iDeCoで運用指図者になる4つのパターン

では、具体的にどのようなケースで「運用指図者」になるのでしょうか。よくある4つの具体例を見てみましょう。

【パターン1】会社を退職・転職した時

これまで企業型DCがある会社で働いていた人が退職し、別の会社に転職して企業型DC制度が実施されていない場合や、独立して自営業など(国民年金第1号被保険者)になる場合、または専業主婦・夫(国民年金第3号被保険者)になる場合は、年金資産を「個人型(iDeCo)」へ移換する必要があります。

この移換の手続きをする際、自分で掛金を拠出するかしないかを選ぶことができ、掛金を出さないことを選んだ場合、その人はiDeCoの「個人型運用指図者」になります。

 

社労士みなみ
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また、退職時に最も注意すべきなのが「6ヶ月ルール」です。

退職後の資産移換手続きは自分で行う必要がありますが、退職後、6ヶ月以内に手続きをしなかった場合、国民年金基金連合会へ自動移換され管理手数料が資産から控除されます。放置すればするほど、大切な老後資金がどんどん削られてしまう大きなデメリットが発生します。

 

【パターン2】自分の会社で企業型DCが導入されたが、加入しない時

自分の会社で新たに「SBIいろどりプラン」のような企業型確定拠出年金(企業型DC)が導入された場合、給与の一部を減額して掛金の原資とする「選択制」が設けられることがあります。

この選択制の場合、希望する人だけが加入でき、加入を希望しない従業員は、減額されなかったお金をそのまま前払金(給与)として受け取ることができます。

また、過去に別の会社で積み立てていた企業型DCの資産や、すでに個人で加入しているiDeCoの資産がある場合でも問題ありません。

企業型DCへの加入を選択しなかった場合は、前職の企業型DC資産を個人型(iDeCo)に移換することができ、個人型の加入者または運用指図者としてそのまま資産を運用し続けることができます。

 

【パターン3】iDeCoの資産を企業型DCに移さず、残しておく時

すでに個人でiDeCoに加入している人が、自分の会社で企業型DCの加入資格を取得したとします。この時、企業型と個人型に同時加入した場合は、年金資産の移換先を選択することができます。本人の希望に応じて、自身の資産を企業型に移換せずに個人型に残して「個人型運用指図者」となる事も可能です。

【パターン4】育児休業や介護休業で無給となり、掛金を一時停止する時

企業型DCに加入している従業員が、出産や育児、家族の介護などに直面した場合はどうなるのでしょうか。

企業型DCでは、原則として掛金の積立てを停止することはできませんが、休職期間や、育児・介護休業期間中(共に会社都合以外の事由の場合に限る)のうち無給の期間については、規約に定めることで掛金の積立てを停止できます。掛金が一時的にストップしている間は、これまでの資産を運用するだけの状態(実質的な運用指図者)となります。詳しくはこちら→【企業型DC】育児・介護休業中の掛金はどうなる?選択制の注意点も

要注意!運用指図者の「手数料負け」のリスク

さまざまな理由で運用指図者になる場合、絶対に知っておくべき「手数料」があります。

項目 加入者
(掛金拠出時)
運用指図者 支払先
国民年金基金連合会手数料 105円 / 収納回 なし 国民年金基金連合会
事務委託先管理手数料 66円 / 月 66円 / 月 日本カストディ銀行等
運営管理機関手数料 金融機関による
(0〜数百円)
同左 SBI証券等

 

個人のiDeCoで運用指図者になる場合、掛金を出している加入者に比べて一部の手数料は免除されますが、掛金を1円も出していなくても、口座を保有している限り「事務委託先金融機関への管理手数料(月額数十円程度)」が毎月必ず発生します。

この手数料は、皆さんの「今ある年金資産」の中から毎月自動的に引き落とされます。つまり、iDeCoで運用指図者として放置していると、運用で利益を出さない限り、毎月確実に自分の年金資産が目減りしていくのです。

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iDeCoで定期預金を利用している場合は要注意

 

企業型DCで休業した場合はどうなる?

一方で、企業型DCで「育児・介護休業」に入り、掛金を一時的に停止した場合はどうでしょうか。

ご安心ください。企業型DC(SBIいろどりプラン)の場合、制度運営に係る費用は全て会社負担となります。そのため、従業員が育児休業や介護休業に入って掛金を停止している期間中であっても、口座管理手数料などは引き続き会社が負担してくれます。iDeCoの運用指図者のように「休業中に自分の年金資産が毎月手数料で削られていく」といった心配は一切ありません。

運用指図者で損をしないための解決策

最後に、手数料で損をしたり、大切な資産を失ったりしないための3つの解決策(アクション)をご紹介します。

【解決策1】企業型DCが導入されたら、iDeCoの資産を「移換」して一本化する

もし、あなたの会社に「SBIいろどりプラン」のような企業型DCが導入された場合、個人のiDeCo口座を運用指図者として残しておくのはおすすめしません。なぜなら、企業型DCの制度運営費はすべて会社負担となるからです。

企業型の加入資格を取得し、企業型で掛金を拠出する加入者は、個人型の運用商品を一旦全部売却し、現金化した後に企業型へ移換できます。企業型へ資産をまとめてしまえば、従業員個人の口座管理手数料の負担を完全にゼロにすることができます。

【解決策2】退職時は「6ヶ月以内」に必ず移換手続きをする

前述の通り、退職後6ヶ月以内に手続きをしないと自動移換されて手数料が引かれてしまいます。退職後、運営管理機関より説明書類が自宅へ届きますので、それを見ながら速やかに移換の手続きを行いましょう。

【解決策3】育児・介護休業に備え、会社の規約を確認・整備する

これから企業型DCを導入する経営者・人事担当者の方は、従業員が育児・介護休業に入った際(無給期間)に掛金の積立てを停止できるよう、あらかじめ規約にその旨を定めておく必要があります。なお、実際に掛金の拠出を停止する際には、作業の実費に応じて、手続き1回あたり5,500円より拠出停止費用をご負担いただく形になります。(この費用は会社からSBIベネフィット・システムズにお支払分がかかります。2026年3月現在の価格)

まとめ

「運用指図者」とは、新たな掛金の拠出はお休みして、これまで貯めたお金の運用だけを続けている状態のことです。

  • 転職、結婚、出産、介護など、ライフスタイルが変化しても無理なく資産運用を継続できるのが確定拠出年金の素晴らしいところ。
  • しかし「口座を持っているだけでも手数料がかかる(iDeCoや自動移換の場合)」という点には注意が必要。

会社に企業型DCが導入されている、またはこれから導入される予定の方は、「制度運営に係る費用は全て会社負担となる」という絶大なメリットを最大限に活かし、iDeCoからの移換なども含めて賢く制度を活用していきましょう!